皆さんは「フードテック」という言葉をご存知ですか?
フード(食料)+テクノロジー(技術)を融合させた「フードテック」は、世界的に注目を集めています。
人工肉を使ったハンバーガーが登場したというニュースだったら、皆さんも記憶にあるのではないでしょうか。
今回は、フードテックが具体的にどのような技術なのか、どのような効果をもたらすのか、「フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義」の内容と共にご紹介していきます。
フードテックとは
フードテックとは、最新のテクノロジーを駆使して新たな食品や調理法を開発することを意味します。
牛肉を使用せず、植物由来のタンパク質で肉を再現し、ハンバーガーを作ったことで話題になりましたよね。
欧米を中心に注目されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、さらに注目が集まっている技術です。
フードテックが解決を目指す食の問題
フードテックが解決を目指す食の問題には、下記のようなものがあります。
食糧不足
世界的に見ると、人口は増加の一途をたどっています。
このままのペースだと、2055年には世界の人口は100億人を超えると予想されています。
人口増加に伴って、深刻な食糧不足も発生するとされています。
また、地球温暖化に伴う気候変動によって作物が育ちにくくなっていたり、育ったとしても、豪雨などの影響によって収穫量が減ったりすることが懸念されています。
飢餓とフードロス
世界では飢餓に苦しむ人々が、8億人以上いると言われています。
それに反して、世界の3人に1人は栄養過剰で太り気味であるという研究結果もあります。
また先進国では毎日多くの食料が廃棄されており、食品過剰生産が問題視されています。
必要な人に必要な量の食品が行き渡るよう、世界的な食料バランスを整えることが重要な課題です。
食の安全
食の安全を保つことも大きな課題です。
傷んだり悪くなったりした食品を誤って食べてしまわないよう管理したり、食中毒の防止をすることもフードテックに期待されています。
傷みにくい食材や、長期保存が可能なパッケージの開発、異物混入を防止する仕組みなどが必要とされています。
動物への依存
現在世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルスの発生源は諸説ありますが、食用の家畜の在り方に問題があることは以前から指摘されてきました。
技術の進歩によって、狭い場所でも大量の家畜を飼育することができるようになりましたが、動物と人間との距離が縮まったことによって、未知のウイルスとの接点も増えることが懸念されています。
食の動物への依存度を減らし、フードテックによる植物性代替肉に切り替えることによって、感染症対策につながると考えられています。
タンパク質の確保
世界には、宗教上の理由や動物愛護の観点からベジタリアンの人々がいます。
また、健康に配慮してヴィーガン食に切り替える人々も増えてきています。
ベジタリアンやヴィーガンは、肉や魚を食べません。
しかし、そのようなライフスタイルの人々にも、健康を維持するためにはタンパク質は必要です。
そこで、本物の肉や魚に代わる植物性代替肉が求められています。
生産者不足
日本国内では、農業や漁業などの第一次産業に従事する人口が減っているだけでなく、食品製造業や外食産業でも人手不足に悩んでおり、事態は深刻です。
フードテックが担う領域
上記にあげた食の問題を解決するよう、フードテックは幅広い分野を担っています。
生産の効率化
農業にテクノロジーの分野を取り入れる「スマート農業」では、より効率的に食料を得られるようになります。
・AIの技術を取り入れることで、食材を育てる際の温度・湿度管理を自動化できます。
田畑やビニールハウス内の状態は、クラウドで監視することも可能です。
・水やりや農薬の散布はドローンを利用することで効率的に行えます。
またトラクターなどの農機も、自動運転技術を利用してタブレットから操作可能です。
このように、気候や天候に左右されず生産できれば、農業によって安定した収入を得ることができます。
また、生産過程を自動化することで、、農業従事者不足の問題も解決できます。
食品の流通
食品を流通される際に課題となる鮮度維持などの問題を、AIやICTの技術を取り入れることで解決します。
また、適切な量を必要とされる場に効率的に流通させる技術は、フードロスの削減にも繋がります。
・ICTによって、これまで多くの費用や手間がかかっていた小口への需要の対応が容易になります。
発注者である飲食店、受注する生産者、物流をICTで結び、受発注がタイムリーに行えます。
・ECサイトを利用することで、個人でも生産者から直接食品を買うことができます。
・スマートフォンなどのアプリから料理をオーダーし、指定場所まで配達してくれるサービスもあります。
配達員はアプリの登録配達員なので、飲食店は配達のために人員を割く必要がありません。
・モバイルオーダーでは、オーダーと決済をあらかじめ済ませておきます。
その後、飲食店の提示する完成時間にオーダーした料理を引き取りに行きます。
作ったものを確実に受け渡すことができるこのシステムは、フードロスの削減にも繋がります。
食品のカスタマイズ
一人ひとりの健康状態や体質に合わせた食品の開発が行われています。
・体に必要な栄養素を多く含み、一食でも十分な栄養が補えるような食品が開発されています。
これは、災害時などにも有効活用できると考えられています。
・特定の食材にアレルギーを持っている人でも、安心して食べられる食品が増えてきています。
代替食品の開発
フードテックでは、代替食品の開発も進められています。
代表的な食品は、人工肉や培養肉とも呼ばれるものです。
人工肉とは、動物性の原料を一切使用せず、植物由来のタンパク質で作られたものを指し、大豆ミートやグルテンミートという名称で販売されています。
また培養肉は、動物の可食部細胞を培養して作られたものです。
人口的に培養すれば、衛生管理がしやすいので、感染症などの予防対策にもなります。
この他にも、栄養価が高い昆虫食にも注目が集まっています。
昆虫は環境にかかる負担が低いため、低コストで大量に生産できます。
調理ロボットの普及
調理技術のフードテックとして、フードロボットの実用化が進められています。
フードロボットは、ロボットアームを使って調理をしたり、料理の盛り付け、配膳、皿洗いなどの後片付けまで、調理に関する様々な作業ができるロボットです。
フードロボットが実用化されれば、外食産業の人手不足が解消されると考えられています。
また家庭用の家電でも、スマートフォンと連携したレシピ検索と調理設定ができるオーブンなど、フードテックの技術を用いた自動調理機が登場しています。
フードテック革命
「フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義」では、フードテックによって変わっていく食の未来と、それに伴って生まれる新たなビジネスについて書かれています。
フードテック業界はめざましい速度で成長しており、新しい技術や企業が次々に誕生しています。
こちらは、まさにフードテックの「今」を切り取った一冊です。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って変化した私たちの食生活にも触れていますので、飲食業界の方のみならず、食に関心のある全ての方にオススメです。
まとめ
今回は「フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義」をもとに、食について考えてみましたが、いかがでしたか?
「フードテック」という言葉を初めて知ったという方も、食の問題は身近に感じていらっしゃるのではないでしょうか。
もしかしたら、人工肉を使ったハンバーガーが主流になる日も、そう遠くないのかもしれませんね。
ではでは。
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